「学校に行けない」「どうしても合わない」そんな子どもを前に、進路や将来が不安で夜眠れないという保護者の方は少なくありません。そうした子どもたちの新しい学びの場として注目されているのが「オルタナティブスクール」です。公立、私立とは違う“もうひとつの学校”と言われます。本記事では、オルタナティブスクールの意味や特徴、メリットとデメリット、フリースクールなどとの違い、学費など、初めての方にも分かりやすく紹介します。

「オルタナティブ(alternative)」は、「代わりの」「もうひとつの選択肢」といった意味の言葉です。オルタナティブスクールとは、従来の公立・私立学校とは異なる教育理念や方法で運営される“もうひとつの学校”の総称。ヨーロッパやアメリカでは、20世紀初頭からモンテッソーリ教育やシュタイナー教育など、子どもの個性や主体性を重視した「オルタナティブ教育」が広がってきました。
画一的な一斉授業や成績重視の評価だけではなく、「どのように生きるか」「自分らしく学ぶとはなにか」を大切にする学びの場として、世界各地で多様なオルタナティブスクールが生まれています。
日本では、オルタナティブスクールの多くが「学校教育法上の学校(一条校)」ではなく、認可外の教育施設として位置づけられています。運営主体は、NPO法人、一般社団法人、学校法人ではない任意団体、個人などさまざま。校舎も、専用の校舎を持つところから、古民家やシェアスペース、自然の中のフィールドを活用するところまで、多様です。
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文部科学省の調査でも、不登校の小中高生は年々増加傾向にあります(※)。その背景には、いじめや人間関係のトラブルだけでなく、発達特性や感覚過敏、過度なストレスなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っているとされています。「頑張ればなんとかなる」という声かけだけでは、どうにもならないケースも少なくありません。
そんな中、「今の学校には行けないけれど、学ぶことをやめたいわけではない」という子どもたちの受け皿として、オルタナティブスクールへの関心が高まっています。
※“文部科学省 「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」ページ”参照
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かつては、「不登校=なんとか元の学校に戻すべき」という発想が一般的でした。しかし近年では、「一人ひとりに合った学び方を一緒に探すこと」が重視されつつあります。
といったプロセスを経て、結果的に別の学校や進路に進む子も多く、「学校に戻るかどうか」だけでなく「その子らしい生き方」を大事にする考え方が広がっています。
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オンライン学習や海外の教育情報の普及もあり、「学校に通う=学びの全て」とは限らない時代になりつつあります。通信制高校やオンラインフリースクール、ホームスクーリング、海外ボーディングスクールなど、選択肢は年々増加。そんな中で、地域に根ざしたリアルな学びの場として、オルタナティブスクールが注目されているのです。
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多くのオルタナティブスクールでは、「子どもが自分で決める」ことを大切にしています。たとえば、
といったスタイルを採用しているスクールもあります。これにより、「やらされる勉強」から、「自分の意思で選んだ学び」に変わり、自己決定感や責任感、主体性が育ちやすいとされています。
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オルタナティブスクールは全体の人数自体が少なく、1クラス数人〜十数人規模というケースも珍しくありません。学年でクラスを分けず、異なる年齢の子どもたちが一緒に活動するスクールも多く、
といったメリットがあります。
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机の上の勉強だけでなく、体験やプロジェクトを通じて学ぶのも大きな特徴です。
など、「手と頭と心」を同時に使う学びが多く取り入れられています。教科書中心の学びが苦手な子どもでも、得意や興味を起点に成長していけるのが魅力です。
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オルタナティブスクールでは、子どもに接する大人の呼び名も「先生」ではなく、「スタッフ」や「ファシリテーター」であることがよくあります。一方的に教える存在ではなく、子どもの学びに伴走するパートナーとして関わるイメージです。
といった役割を担うことが多く、「大人対子ども」ではなく「人と人」としての関係性を重視します。
「お仕事」と呼ばれる教具を使った活動を通じ、子供の集中力や自律性を育てます。
点数による評価を行わず、芸術活動や体を使った学びを重視します。
「サークル(対話)」「遊び」「仕事(学習)」「催し」の4つの活動をサイクルさせます。
「カリキュラム」も「テスト」も「クラス分け」もありません。学校のルールや予算使い道まで、すべて子供たちの話し合い(ミーティング)で決定します。
特定のアカデミックな哲学というよりは、現代的な課題解決型の学習スタイル。「探究学習」とも呼ばれます。
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代表的なメリットは次のようなものです。
従来の学校では「問題行動」と見なされてしまうような特性(多動、感覚過敏など)も、オルタナティブスクールでは「個性」として受け止められやすいという声もあります。
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一方で、次のようなデメリットや注意点もあります。
多くが無認可のため、在籍校との連携がないと「不登校扱い」になるケースがある
情報公開の度合いや運営体制、説明と現場のギャップがないかなど、見学でしっかり確認する必要があります。
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フリースクールもオルタナティブスクールも、学校に行きづらい子どもの居場所や学びの場として機能している点では共通していますが、一般的には次のような傾向があります。
フリースクール:
不登校の子どもが安心して過ごせる「居場所」「交流の場」としての側面が強い。
オルタナティブスクール:
独自の教育理念やカリキュラムを持つ「学校に代わる学びの場」として位置づけられることが多い。
両者の線引きは必ずしも明確ではなく、「フリースクール」と名乗りつつオルタナティブ教育を実践している場所もあります。
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公的な補助金が出ないスクールが多いため、学費は公立より高く、私立並みかそれ以上になる傾向があります。
入学金 5万円〜20万円程度
授業料(月額) 3万円〜8万円程度
その他の費用 教材費、キャンプ積立金、施設維持費など
※学校によって大きく異なります。また、地方自治体によっては独自の補助金制度がある場合もあるので、確認が必要です。
など、条件によっては出席扱いとなるケースもあります。必ず在籍校や自治体、検討しているスクールに確認してください。
などスタンスが異なるため、見学の際に「過去の卒業生の進路」や「進学希望者へのサポート体制」について確認しておくとよいでしょう。
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オルタナティブスクールは、今の学校がどうしても合わない子どもたちや、もっと自分らしい学び方を選びたい子どもたちにとって、「もうひとつの選択肢」となり得る場所です。
まずは親子でイベントや見学会に参加して、新しい学びの形を体験してみてください。