高校中退をするとどうなる?中退後の進路を紹介

公開日: 2025年5月27日 更新日: 2025年5月27日

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学校に馴染めなかったり、やりたいことが見つかったりとさまざまな理由で高校中退をする方がいるでしょう。しかし、何も考えずに高校中退をするのはおすすめできません。高校中退をすると進学や就職などで苦労する可能性があります。

本記事では、高校中退後の進路でどのような影響が出るのか紹介。具体的な進路先も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

高校を中退する生徒の割合

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高校を中退した生徒が、どれくらいの割合いるのか気になるところでしょう。2023年文部科学省のデータによると、高等学校における中途退学者数は46,238人、中途退学率は1.5%(※)であることが明らかになりました。

平成初期の12万人ほどの高校中退者と比較して減少傾向にあるものの、まだまだ中途退学者は多くいるのが現状です。高校中退の主な理由には、学業不振や学校生活、学業不適応、進路変更、病気など、さまざまな要因が考えられます。

とくに学校生活・学業不適応は約34.2%と割合が高く、学校の雰囲気が合わなかったり、人間関係がうまく築けなかったりといった理由が挙げられました。

※”文部科学省 公式HP 令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(PDF)”参照

高校中退のデメリット

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高校を中退すると、億劫な学校生活から解放されたと喜ぶ方がいるかもしれません。しかし、何も考えずに高校を中退すると、その後の進路や就職などで苦労する可能性があります。

人によっては、高校中退をするべきではなかったと後悔することもあるでしょう。

進学が難しくなる

高校中退のデメリットは、大学や専門学校への進学が難しくなることです。大学や専門学校へ進学するためには、高校卒業の資格または見込み者でなければいけません。

実際に大学入試センターでも入試の出願資格に「高等学校卒業見込み」と記載(※)されています。

もし中卒でも大学や専門学校への進学を目指したい場合には、まずは高卒認定資格を取得することが必要です。

※”大学入試センター 公式HP”参照

資格取得の種類が限られる

高校中退後の就職を目指すために、資格取得を検討する方も多いでしょう。しかし、中卒の場合、受験できる資格試験が限られるため注意が必要です。

ただし、中卒でも資格の種類によって受験が可能です。例えば調理師や公務員、保育士、介護福祉士など、中卒でも受験可能な資格試験は意外と多くあります。

実務経験や教習プログラムの参加などの条件が設定されている場合があるので、事前にチェックしましょう。中卒でも取得可能な資格は以下のとおりです。

・宅地建物取引士
・介護福祉士
・調理師免許
・保育士資格
・日商簿記
・MOS試験
・フォークリフト運転技能者
・玉掛技能者
・危険物取扱者
・普通自動車免許

※”厚生労働省 公式HP”参照

就職や収入に影響が出やすい

高校中退のデメリットは、就職に影響が出やすいところです。中卒でもアルバイトやパート、派遣などで働くことは可能ですが、正社員の場合は採用条件によって就職が困難なケースがあります。

実際に多くの企業では高卒または大卒枠での採用を行っており、中卒だと応募すらできないことも少なくありません。

また、高校中退によるリスクとしては、不安定な雇用状況で安定した収入が得られにくくなる点が挙げられます。アルバイトやパートなどで働く場合は時給で給与を得る形になるため、シフトが減ると収入も減りやすくなります。

さらにアルバイトやパートで働き続けるデメリットは、年齢を重ねるごとに正社員への就職が難しくなることです。

実際に厚生労働省の平成30年のデータによると、フリーターを正社員として採用した事業所の割合は、15〜34歳で84.5%でしたが、35〜44歳では80.7%と減少(※)したことが明らかになりました。

このように、高校中退は今後のキャリア形成にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

※”厚生労働省 公式HP”参照

人間関係が希薄になる

高校中退をすると、人間関係が希薄になる可能性があります。学校は、先生や同級生、先輩などと関わる機会が多い環境です。学校はコミュニティの場でもあり、日々の人間関係を通じて人間性が磨かれます。

しかし、高校中退をきっかけに人間関係が希薄になると、孤独感や疎外感、劣等感、さみしさ、喪失感など、さまざまな負の感情を抱きやすいです。人によっては、引きこもりがちになる場合もあるでしょう。

高校中退後も人とのつながりを大切にするためには、同級生や先輩と定期的に連絡を取ることが重要です。

社会性が身に付きにくくなる

学校では、体育祭や文化祭などのイベントや部活、恋愛、友達同士での喧嘩、先生とのつながりなど、さまざまな場面で社会性を身につけられます。何気ない学校生活ですが、社会に出た後を考えると重要な体験といえるでしょう。

しかし、高校を中退すると、こうした機会が減り、社会性を身につけるチャンスも限られてしまいます。社会性を養う機会が少なくなると、今後の人間関係の構築や仕事でも苦労する場面が増えるでしょう。

情報収集が限られる

高校中退のデメリットは、情報収集の手段が限られる点です。例えば、学校では受験や就職が話題にのぼることが多く、友達や先生、先輩などから幅広い情報を得ることが可能。さまざまな価値観に触れることで、柔軟な思考力も養われやすくなります。

しかし、高校を中退してしまうと、情報収集の手段がインターネットやSNSなどに限られてきます。これらのツールでも情報を集めることはできますが、得られるのは一般的な情報が中心で、多様な視点を持ちにくくなるでしょう。

高校中退のメリット

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高校中退は、進路先の収縮や就職への影響などさまざまなデメリットがありますが、人によってはメリットがある場合もあります。
今ある環境から離れられる

高校に入学したものの、校風やクラスの雰囲気に馴染めず辛い思いをしている方もいることでしょう。しかし、高校中退をすれば辛い環境から離れられます。とくにいじめを受けていた方は、学校生活から離れることで辛い環境から解放されるでしょう。
自分の人生や進路について考えられる

高校中退をきっかけに、自分の人生や進路について考える機会が作れます。じっくり考えた上で新しい学校への編入や就職などを決めることで、新たな道が導きだせるでしょう。もし自力で考えるのが難しい場合には、親や周りの大人に相談してみるのもおすすめです。

自分の学力に合った学校に入り直せる

高校中退をする方の中には、学業不適応を理由に辞める方もいます。授業の難易度が高いと、必死に授業についていかなければなりません。とくに部活に所属している方であれば、空いた時間に復習をする必要があります。

しかし、高校中退をきっかけに自分の学力に合った高校に編入すれば、無理しない範囲での学習が可能。自分の学力に合った授業を受けることで、「勉強は意外と楽しいかも」と勉強に対する認識が変わるかもしれません。

高校中退後の進路7選!自分に合った道をみつけよう

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高校中退後、路頭に迷わないためには、しっかり事前に進路を考えることが重要です。高校中退後では、一体どのような進路があるのか紹介します。

他校への編入

一度、高校を中退すると、編入は難しいのではないかと考える方もいます。しかし、全日制や定時制の高校、通信制高校でも、他校への編入が可能です。ただし、入学可能な時期が限られていたり、定員に空きがない場合があり、編入できない可能性もあるので確認しましょう。

また、高校中退する際はタイミングに注意が必要です。例えば、2年生修了後に中退すれば、編入時には3年生から編入できますが、2年生の修了前に中退してしまうと編入時にもう一度、2年生をやり直さなければならないことがあります。

編入試験は、学校によって実施される時期が異なります。気になる学校があれば、事前に試験の日程を把握し試験対策をしましょう。
自分のペースで学ぶなら通信制高校

高校を中退した方の中には、決まった時間に起きられず不登校気味になっていたり、学校の雰囲気に馴染めなかったりする理由で中退した方も少なくありません。

自分のペースで学びを深めたい場合は、通信制高校への編入がおすすめです。通信制高校は自宅学習がベースとなるため、自分のペースで授業が受けられます。

ただし学校によっては対面でのスクーリング授業をおこなっており、具体的なカリキュラムを事前に知ることが必要です。単位を取得するためには学習管理の徹底が不可欠ですが、自分のペースで勉強したい方には魅力的でしょう。

高卒認定試験の受験

高校中退後、中卒ということから進学や就職などで苦労している方もいるでしょう。少しでも進学や就職で不利になりたくない場合には、高卒認定試験を受験するのがおすすめです。

高卒認定試験とは、合格すれば高卒認定される試験で年に2回実施されています(※1)。高卒資格を得るためには3年間高校に通わなければなりませんが、試験に合格すれば高卒認定の資格を得ることが可能です。

受験する年度の終わりまでに満16歳以上になっていれば、高校中退者はもちろん、不登校の方や外国人の方でも受験できます(※1)。高卒認定の試験科目は、「必修科目」と「選択科目」の2種類で計8科目の受験が必要です(※2)。

必修科目は国語・歴史・地理・公共・数学・英語・情報で、選択科目は化学と人間生活・物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎の中から2〜3科目選びます。

高卒認定試験の科目合格率は約90%といわれており、事前に試験対策をすれば難しい試験ではありません。8月と11月の年2回行われるので、当日までに試験対策を徹底し、合格を目指しましょう。

※1:”文部科学省 公式HP 高等学校卒業程度認定試験”参照
※2:”文部科学省 公式HP 試験科目・合格要件・出題範囲”参照

アルバイトや就職

高校を中退した後、生活費をまかなうためにアルバイトをする方も多いでしょう。義務教育を修了していれば、年齢に関わらず中卒でもアルバイトが可能です(※)。早いうちから社会経験を積むことで、高卒や大卒と比較して仕事のスキルも早く身につきやすくなります。

より高い収入を得るために、就職を考える方もいるでしょう。しかし、中卒の場合だと仕事の選択肢は限られてきます。

企業によっては学歴不問や社員登用制度を設けており、正社員を目指すことは可能ですが、中卒では就職が厳しい現実もあることを理解することが重要です。

※労働基準法により18歳未満は労働時間などに制限あり
※”厚生労働省山梨労働局 公式HP”参照

資格取得

高校中退後に何かスキルを身につけたい場合は、資格取得を検討してみるとよいでしょう。中卒でも宅地建物取引士や介護福祉士、調理師免許、保育士資格など取得可能な資格は豊富にあります。

資格取得のメリットは、スキルの獲得はもちろんのこと、自分の進路が明確になりやすくなる点です。例えば、保育士資格を取得することで、保育士の仕事に興味を持ちやすくなり進路が定まりやすくなります。

高校中退で先行きが不安だった方でも、資格取得をきっかけに自分の進路が見えるようになるかもしれません。

起業

具体的に、取り組みたいビジネスがあれば、起業するのも1つの手段です。中卒者でも具体的なビジネスプランを持っていれば、起業で成功する可能性はあります。

しかし起業をする際には、資金調達やビジネスプランの作成、経営や経理に関する知識、売上を維持するためのアイデア力などが求められるため、なんとなく起業したいというモチベーションでは成功は難しいでしょう。

起業はすばらしい選択である一方、リスクの高さも十分理解することが重要です。

海外留学

何か刺激を求めている方であれば、思い切って海外留学をしてみるのもよいでしょう。海外に足を運ぶことで言語の違いはもちろんのこと、日本とは異なる文化や考え方などにも触れられます。海外留学をきっかけに、自分のやりたいことや進路が明確になるかもしれません。

ただし、海外留学には学費や交通費、渡航費、ビザ申請など、多くのコストがかかります。1ヶ月あたり約15万〜60万円かかるといわれているため、事前に費用を把握した上で渡航することが重要です。

高校中退で後悔しないためには?

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高校中退をして後悔している方は少なくありません。高校中退で後悔しないためには、自分の進路についてよく考え、周りの大人と一緒に話し合うことが重要です。

高校中退は人生の大きな転換期の1つでもあるため、じっくり検討を重ねた上で決断することが求められます。もし考えがまとまらない場合には、担任の先生やスクールカウンセラー、周りの大人に相談してみるのもおすすめです。

多くの方からの意見やアドバイスをもらうことで、高校中退時の後悔も少なくなります。

高校中退前にじっくり考えよう

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本記事では、高校中退後のデメリットや進路について解説しました。高校中退をすると、正社員での就職が難しくなったり、進学できなかったりといったさまざまなリスクがあります。

高校中退で後悔しないためには、両親や担任の先生、スクールカウンセラーとしっかり話し合った上で慎重に決断することが重要です。